Belden 88760の3芯バージョンが、このBelden 88770です。3芯という、特にコンデンサーマイクを使った時のファントム電源を、別アース回線で送りますので、ノイズが激減するものです。
Belden 8412のほうは、2芯ケーブルであり、ホット、コールド、アース(シールド)で、同一線材が、アースとシールドを兼ねています。
なお、4芯のスターカッド接続のケーブルは、磁界の影響を避けて、ノイズを削減するよう、モガミやカナレが製造しているものです。それはそれで優秀と思いますが、特に88770はマイクケーブルとしての用途に最高でしょう。
Belden 88770は、ホット、コールド、アース、と三芯が独立していて、その外側にシールドが、別途存在しているという設計です。 それゆえ、ノイズを拾っているシールドからファントム電源を送るのではなく、アース専用回線からファントム電源を送れる事から、コンデンサーマイクに最適 のものになります。
また、88770は無国籍の音であり、完璧なフラットの音のケーブルですので、マイクに全くクセが無かったら、という 前提では、最高のマイクケーブルになります。が、普通はマイクというものは、マイクケーブルに合わせて設計されていると思いますので、ある意味リファレン ス的な役割を88770は果たしてくれるでしょう。このマイクは本当はどういう音なんだろう? というようなケースです。
ホット、コールド、アース(シールド)、と、通常、二芯のケーブルであれば、マイクケーブルのバランス転送は可能ですが、Belden 88770のように、アースとシールドを分けることにより、マイクを使う場合には、ファントム電源を全く汚さずに、マイクに電源を供給することが可能にな り、通常の機材同士の接続をする場合にも、その特殊性により、分けられて存在しているシールドが、ケーブル内のアース線を汚すことがありませんので、場合 によっては、ノイズが10分の1になる「可能性」を、持ちます。
このケーブルは、それを実現するため、4極-4極の完全結線になります。二本で、16カ所の結線という大変な作業ですが、音のために、妥協しておりません。それでこそ、クリアーなファントム電源を送る事が出来るのです。
なお、Belden 8412のほうは、メス側4極、オス側3極という通常のプロ用バランスケーブルの標準の結線になります。
三芯、つまりベルデン 88770のようなケーブルの場合には、メス4極-オス4極が理想になります。この4極-4極のBelden 88770は、確かにオーディオ用途としても最強のバランスケーブルです。4極を生かそうと思いますと、XLRプラグである必要があります。片側がフォンTRSプラグのかたは、Belden 8412をお選びください。
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XLR-XLRの場合に限り、Belden 88770は理想の形です。しかし通常のマイクケーブル用途としては、Belden 8412のXLR-XLR、又はBelden 88760のXLR-XLRで十分と思われます。
プロのかたの大事な録音などに力を発揮するのは事実ですが、ただし、オーディオ用途としてのバランスケーブルとしても、ファントム電源を伴うマイクケーブルとしても、技術的に最高度のものが、3芯+シールドのケーブル、このベルデン 88770です。
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3芯+シールドの考え方を、単純化して分かりやすくします。マイク本体には、アースが回っています。たとえそれが100ボルト環境で、アース力が弱くとも、アースは回っています。マイク本体外側こそが、ノイズを受ける場所です。ノイズをマイク本体で受けて、アースに流してしまうという構造になっているのです。それゆえ、マイク本体はアースを回すため、「金属でなければならない」です。
3芯+シールドのケーブル、このベルデン 88770をマイクケーブルにした場合も、それと全く同じ考え方でいいです。ケーブル外側のシールドは、ノイズを受けます。ケーブル内部のアース線(ファントム電源を送る線)、そこには、ノイズを受けさせません。
ノイズは、マイク外側から、ケーブルのシールドを経由して、アース(地、地球)に流れていきますから、音に悪影響を与えません。
マイクとケーブルがまるで一体化してしまったかのように、全てのノイズを外側で受けて、アース(地)に流す、これが3芯+シールドのケーブル、つまりBelden 88770の考え方であり、その正体です。
これは、実に基本に忠実な考え方であり、ケーブルという存在を、非常に重んじている考え方だと言えます。ケーブルを機材と全く同等に考えているのが、Belden 88770です。
このBelden 88770は、Belden 8412の上級バージョンと考えていただいていいです。Belden 8412は非常に優れたケーブルですが、そのBelden 8412という、優秀な基本があってこそ、そのうえで、バランス転送専用にチューンされているものが、この、ベルデン 88770だと、お考えください。
■スターカッド接続のケーブルについて
モガミ、カナレの主流商品は、スターカッド接続です。これは2芯のケーブル、往年からあるBelden 8412等の、バランス転送の原理をそのまま応用して、磁界の影響を受けにくくして、ノイズを削減するという考え方のケーブルです。それはそれで非常に優秀ですが、アースがきちんと来ている環境であれば、Belden 8412などの2芯、又は8423などの3芯ケーブルのほうが、むしろ周波数特性に優れる可能性は大です。周波数特性のコントロールは、2芯、あるいは3芯のほうがしやすいでしょう。
現にカナレ社の技術者は、2芯のほうが周波数特性に優れていると言っています。4芯の考え方は特に日本で普及したようです。これは標準の電源の、「アースの有無」が大きく影響したのではないかと考えられます。外皮のシールドにきちんとアースが来ていれば、それが磁界の影響をも遮断するのですから、むしろ、それによって、ケーブル内部のアースラインを守ったほうが良いのではないかと、思えます。アースが来ていない環境の多い場所(日本国内ですが)では、磁界の影響を受けにくくするほうに重きを置いたということでしょう。
いづれにしましても、モガミもカナレのその4芯ものこそが、日本の標準の音を作ってきたわけですし、アースが来ている場所でも、ノイズに対しては確かに強いのですから、モガミ、カナレを選ばれるときには、当店が出している4芯ものの世界戦略品を選択されるのが、ベストチョイスです。4芯ものがスタンダードのメーカーの2芯のケーブルというのは、特性が変化していて、かえって使いにくいことになります。