ケーブルの方向性については、鬼門とします。
オーディオケーブルにおける方向性には、二種類存在しています。
一種類めは、銅線の方向性をうたったものです。「銅線そのもの」には、方向性はありません。
方向性があるとうたっているもの、ケーブルに矢印が記入されたものは、怪しい限りです。電子顕微鏡で分子の配列を示した例が、ありますでしょうか。
銅線の制作時に、銅を引っ張るからというのは、眉唾です。粘土と同じで、引っ張って伸ばしたところで、分子など同じ配列になるでしょう。
また、分子の配列が音に影響を与えるなどという証拠は、どこにもありません。
この、第一の方向性は、論外です。真っ赤なデタラメですから、無視されてください。
二種類めの方向性が、問題です。シールドの操作です。ケーブルの片側のシールドを外して、方向性を意図的に作り出すものです。
こちらの、意図的な方向性のケーブルについてだけ、問題にします。
■非常に分かりやすい例を出します。
ギターケーブルで、方向性のあるケーブルを使ったほうが、音の抜けが良い、つまり、もやもやした音から解放されると言われたミュージシャンのかたがおられました。
そしてその理由を、ある楽器店は、ケーブルの片側のシールドを外すことによって、アースループを避けれるから、音が抜けるだと、そのような説明をしたそうです。
そのミュージシャンのかたから、方向性のあるギター用のシールドの製作依頼が入りました。このときばかりは、私も方向性か否か、いづれを選ぶかで、非常に迷いました。
アースループ・・、このアースループというのは、間違っています。普通はアースループは、突然襲ってきて、もっとひどいハムノイズに襲われます。
それは、きちんとしたアースが引かれている場合であって、通常の100ボルト環境で起きることではありません。
したがって、アースループという理由付けは間違っていますが、音が抜けるのは本当のことでしょう。なぜそうなるのかを考えました。
こういうことは、シンプルに考えなくては分からない種類のことです。電気理論で複雑に考えると、間違います。
アースの取れていない100ボルト電源に接続した機材は、通常、20ボルト前後の交流電圧を帯電させています。機材本体にです。
ケーブルのシールドと機材本体とは、そのままダイレクトに結線されています。したがって、シールド部分は、機材本体の帯電と全く同じ、20ボルト前後も
帯電していることになります。シールド線というのは、楽器の微少信号を伝える線を、360度、全方位から、至近距離で、取り囲んでいます。
しかもそれがギターケーブルですから、5mや7mもの長い距離を、ずっと取り囲んでいることになります。
20ボルトも帯電したものが微少信号の回りを長きにわたって取り囲んでいれば、これはいくらなんでも、悪影響が大きすぎます。
音がもやもやして抜けてこないのは当然のことです。したがって、機材側、つまりアンプ側のシールドを切れば、その20ボルトの帯電の影響は、
ほとんど受けなくて済むということです。
結論は、上記のように、割と単純なことです。
これをオーディオに当てはめても、同様の事が起きていると思います。エレキギターというものは、電源がありません。
したがって、ギター側は帯電していませんから、アンプ側だけを考えればよく、分かりやすい例だったと言えます。
ギターのミュージシャンのかたへの私の回答は、以下のようなものでした。
「それならば、いっそ、シールドのないケーブルを使ったほうがいいくらいですから、あえてシールドケーブルを使われるのであれば、シールドは、両端マイナス、
つまりアースに落として造りましょう。アースの来ているところで使うにはシールドは必需品です。シールドがノイズを拾って、アース、つまり地面にそれを
落として流してくれるからです。アースの来ていないところでは、あえて専用に、シールドのない、単なる二芯のケーブルを使ってください。その種のものも持っています。」
そして、そのミュージシャンのかたと、念を入れた相談のうえ、結局は、両端シールドを落とす、つまり方向性を持たないケーブルということになりました。
せっかくのシールドだから、というわけです。
しかし、ギターの場合は特殊です。アースの来ていないライブハウスなどで演奏せざるを得ないことも多いのです。
結局のところ、ギターケーブルも、オーディオ用のケーブルも、次のことが言えます。
■専用アースを引いた途端、片側のシールドを外して方向性を持たせたケーブルを使うよりも、両側ともシールドはアースに落ちていたほうが、高性能で、音変化もなく、
信頼性も、圧倒的に高いです。シールドはノイズを拾って地面に流すものですから、両側が地面に結線されていたほうがノイズを地面に流す能力が二倍高くなりますから、
高性能なのは当然のことです。
とにかくオーディオは、機材全体が、CDPであれ、アンプであれ、20ボルト近辺も帯電しているものなのですから、まずは、それを取り去ることが第一です。
それが専用アースです。専用アースを引いた途端、音は良くなります。
ケーブルを考える時に、出力側の抵抗、入力側の抵抗などというわけの分からない説明に、惑わされないでください。
専用アースさえ来ていれば、そのようなものは、すでに全く関係ありません。シールドの両端とも、機材などではなく、「大地」つまりアースに、直接、接続されています。
オーディオのかたがたは、普通、音的にも、環境的にも、進歩されていかれます。それが自宅であるがゆえ、アースを引けば、途端に恩恵にあずかることができます。
進歩ということを前提にした途端、方向性のケーブルは、鬼門となります。
さすがにギターのミュージシャンのかたの場合には、こちらも迷いました。ライブハウスなどは、アースが来ている例のほうが少ないですから、特殊な例です。
かといって、動き回るステージに、単なる二芯の強度のないケーブルは向きません。しかし、レコーディング時にスタジオでも使うとなれば?、などなど迷うのです。
しかし、自宅となれば話は全く別です。
■下記は、非常に重要なことです。
アース工事をするための金額が、1万円だったとします。二時間もあれば、工事は終わります。
それだけのことで、機材全体の帯電が取り払われ、機材内部の回路への、帯電による悪影響も、全部取れて、さらに、シールドも、異常なほど、ノイズを遮断してくれます。
そして、その効果は、5万円のCDプレーヤーを300万円のCDプレーヤーに交換するよりも、遙かに絶大なる、威力があります。
上記の説明で十分でしょうか。
再度、基本的なことを分かりやすく書いておきます。
■専用アース回線、イコール、ケーブルのシールド及び、全機材の「本体」の金属が、地面に直接、結線されます。
アースが来ていないからこそ、下記の図式が生まれます。
1)電源がぼろい—->シールド力が弱い—->ぼろい電源はそのままにしておいてケーブルであれこれ試行錯誤する—->方向性などと言い出す—->ろくな音が出ない—->
—->非常に高い機材やケーブルに望みを託す—–>それでもボロい音しか出ない—->泥沼に陥る—->さらに高額でボロい機材や方向性のケーブルを買い足していく—->
—->音がさらに病的な領域にさまよい込んでいく—->オーディオ地獄の住民となる—->病気であることの自覚などあろうはずもないが不思議に誇りだけは持っている—->
—->人にも自分と同じ運命をたどることを勧める—->地獄の住民を増やし続ける—->そして、現在が、あります。
最も哀れなことは、上記の図式に落ち込むことです。
この先の運命は、人によって実に様々と思われます。
運が良い場合しか、書きません。
—->良い電源に、騙されたと思ってしてみる(専用アースなどを引く)—->機材もケーブルも全てボロかったということが判明する—->あっけにとられる—->
—->全て夢だったと呆然とする—->正気に戻り、20年、または30年のオーディオ人生を嘆く—->全部の機材と方向性のケーブルを捨てる、又は、売却する—->
—->泥沼、オーディオ地獄から、ついには、解放されて、自由を得る。
電源がぼろければ、電源を良くしてからスタートするのが、普通のやりかたであって、これは当たり前のことです。上記のような最悪のパターンの図式、
ヘンテコな種類の改善(改悪)、ケーブルの方向性もその一つですが、そのような改善などというものが、企業内部でしている様々な改善で、許されますでしょうか。
有無も言わさず、「バカ!」と、上司に怒鳴られるだけです。
私は皆さんが常に進歩されていかれることを前提にしていますし、本当の事を知られれば、それが安価であれば、実行されるかたのほうが多いことを、前提としています。
進歩したときになって必要がなくなるようなボロいものについては、ケーブルであれ機材であれ、まったく論外です。
したがって、シールドは、特殊な依頼以外は、常に両端をアースに落としたものしか、製作していません。
米国には最初からアース回線が来ています。それはその国では、当たり前のことであり、どの家庭でもスタジオでもそうです。
日本のスタジオにもアースくらいは当然来ています。来ていないスタジオがありましたら、アースはすぐ引いてください。
プロ用のバランスケーブルにつきましては、方向性など全てのケーブルにありません。バランスケーブルの大半は二芯です。
二芯のケーブルは、シールドがマイナスとアースを兼ねていますから、シールドを両端マイナスつまりアースに落とさないと、音が出ません。
8412もバイタルも、モガミもカナレもそうですが、二芯、又は、二芯の理論を基本とした四芯です。それがプロ用規格の当たり前のケーブルです。
スタジオにはアースが来ているのが当たり前のことですから、方向性など作れようはずもないですし、方向性は、当然のように、全部ありません。
方向性が作れるとすれば、ベルデン8423、三芯のケーブルだけですが、その種のケーブルは非常に少ないですし、方向性を入れたとしても、性能を落とすだけです。
方向性をうたったケーブルや、その種の考え方は、あらゆる進歩を阻害しています。
■シールドは、アースを引いたとたん、機材の抵抗値というようなわけのわからないものでなくなり、地面そのものにダイレクトに結線されると考えてください。
とても簡単で、小学生にでも分かることです。
注:アースは引けない環境だというかたが、時々みえます。マンションであれば、天井裏か、壁の裏にある鉄骨から、アースを引いてもらってください。
又は、配電盤には、鉄骨から取った良質なアースが来ているはずですから、そこからアースを引いてもらってください。
日本国内で、アースの引けない環境など、あり得ません。
ケーブルの方向性は、鬼門とします。
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ケーブルの方向性
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ケーブルの方向性などと、よくぞまぁ、そのようなデタラメをオーディオは吹聴してきたものです。ケーブルの方向性は、大鬼門です。 |